医学部学生セクハラ事件 (仮装コンテスト番外編)

 京都大学的仮装コンテスト開催時に起こったことについて。
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「京大的仮装コンテスト」を観覧しているときにそれは起きました。
各 チームがチーム紹介をする段になった際に、もともとの企画参加チームではないものの、他で出店している医学部の「男性」学生たちが白衣という「仮装」をし ているという理由から宣伝を兼ねてマイクアピールのみに参加したのですが、その際に「触診もやってます!女性は乳がんチェックにどうぞ!」という言動で笑 いをとったのです。これから医師になる学生という立場を利用しながら、乳がんという病気を「女性の乳房を触りたい」と己の性的欲望の表現のネタにしたので しょう。おそらく社会的に期待される医者のあるべきイメージに対抗する振る舞いをステージで披露することによってその場を盛り上げたかったのであろうと思 います。
これから医者になっていくという人物が聴衆に向かって乳がん検診の触診は自分にとって女性の乳房を触る機会であると高らかに宣言しているような行為の何がおかしく、笑えることなのか少しも分かりませんが、患者にとってこのような医者が担当になったらと思うと嫌悪と恐怖を感じても全く不思議ではないかと思いま す。誰だって重い病気を抱えれば、病気であることそのものが人生において切実な問題になり得るでしょう。それを安直にネタにするだけでもその倫理観を問わ れて然るべきですが、特に乳がんという患者のほとんどが女性である[1]疾患に対して男性が性的欲望表現のために利用するのはより一層暴力的であると思います。さらに患者と医師という「両者に「強者-弱者」という上下関係が存在している」[2]関 係において、医師を自分では選べない中で患者にとっては担当医師がどんな人物かもまた闘病に伴う切実な問題となり得ることを、医師を目指す彼らこそ、あの 場で誰よりも深く自覚すべきでしょう。そもそも彼らは彼らが呼びかけている観客の中に、今まさに乳がんを患っている女性や、もしかしたら乳がんかもしれな いと不安に思っている女性や、かつて乳がんであり今も再発を心配している女性や、施術によって乳房を切除したことと向き合うことに困難を感じている女性 や、又はそのような状況に自分でなくても、友達が、パートナーが、母が、自分にとって大切な存在がいるかもしれない、ということを彼らはどうして少しも思 い至らないのでしょうか?自己紹介で医学部6回生であり「来年からお医者さんや」と無邪気にアピールしていましたが、医学部の教育は6年間に渡ってこれを 育てているのかという絶望を覚えました。


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[1]男性の乳がん罹患率、死亡率は女性患者の1%程度の頻度(「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン2004年版」日本乳癌学会編)
[2] 「現代医療における医師-患者関係の問題点とその克服」(鮫島輝美 集団力学2010年 第27巻)において挙げられる医師と患者の権力関係をあらわす具体例を1つ 引用する。「首に湿疹ができた」と、一人の女子中学生が皮膚科を受診した。皮膚科医は「他に(湿疹が)出てないか確認するから、そこで衣類を脱ぐよう に。」と指示し、若い男性の研修医が何人もいる前で、その女子中学生を下着一枚にさせたという。そして、「他には出ていないようだな。」と確認したとい う。このように理不尽に思われることでも、診察の場面では、患者は抵抗するすべを持たない。「医師が話す」ということが、「力=権力」として働いているの である。」

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